天空の矢はどこへ?
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森博嗣「天空の矢はどこへ?」を読んだ。
かつて、「神」という絶対的な理由がいた
                    時代と場所があった。
                    そこから数百年をかけて、人間が自分達で
                    作った理由で埋め尽くす方向へ、少しずつ
                    シフトしてきた。
                    それは自然を人工に置き換える行為であり、
                    つまりは「理解する」ということだ。
一つひとつの理解は単純でも、それを続ければ
                    膨大な数の理解が積み重なることで複雑になる。
                    複雑化した人工はやがて新たな自然となり、
                    それを理解する過程において、元の人工性は
                    忘却される。
                    そうしてウォーカロンは人間になるのだろう。
                    農作物が自然食品と呼ばれるのと同じだ。
ここから先、人間は理由の担い手であることを
                    放棄する方向に進むだろうか。
                    次に理由を担うのは人工知能だろうか。
                    そもそも個は理由を必要としなくなるだろうか。
                    いずれにせよ肉体に紐付けられた個々の意識は
                    薄れることになるが、共通思考の志向する方向
                    とは一致するように思う。
イシカワの社員、カンナ、マガタ・シキ。
                    あるいは、人間、人工知能、神。
                    それぞれの天空の矢はどこへ行くのだろう。