揮発性
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更新される秩序を生命と呼ぶならば、
                    更新による変化がなくなった秩序は、
                    既に死んでいると言える。
                    ヴァレリーはこのことを固体と液体の
                    比喩で表現した。
固体と液体のあいだで相転移しながら
                    流動する生命の大部分が、死とともに
                    揮発してしまった後でも、貝殻、化石、
                    書物、建造物などの残滓が、その生命
                    の面影を宿す。
揮発性メモリとしての作者と、
                    不揮発性メモリとしての作品。
作品もいつかは揮発してしまうが、
                    少しでも不揮発性を高めようとする
                    傾向が葬制につながったのだとすれば、
                    作品を残すこともまた、人間的な行為
                    なのだと思われる。