現実
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現実は、コンセンサスが得られることによって立ち上がる。
                    コンセンサスが得られている様を現実と呼んでもいいくらいだ。
一つの物理的身体の各センサにおける抽象が同期化されること
                    によっても一つの現実は得られるが、その現実は、そこに実装された
                    一つ(あるいは少数)の心理的身体にとってだけのものであり、
                    夢や幻覚との区別はないと言ってよい。
                    機械人間オルタが漂わせる虚ろさの原因は、この点に尽きる。
複数の物理的身体/心理的身体間における通信によって得られる
                    コンセンサスからも現実は立ち上がり、これが一般的に現実と
                    呼ばれるものだ。
                    ここで言う現実はもちろん一つである必要はない。
                    むしろ、コンセンサスが得られていることを確認することが、
                    現実という言葉を持ち出す唯一最大の目的とも言え、当該
                    コンセンサスに無関係な事柄はその現実にはいないとみなしても
                    差し支えない。
                    これは、何かが実在するとして、それが「現実」という名の複数の
                    異なる領域に実在するということではなく、むしろ「現実」という
                    設定の方が、実在するものの後から想定されるものに過ぎないという
                    ことである。
「先生……、現実って何でしょう?」萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」
森博嗣「すべてがFになる」p.357
Virtual Realityは仮想現実というよりも、実質的現実という訳の方が
                    しっくりくる。
                    それはつまり、現実を構成するためのコンセンサスをとる通信相手と
                    して、新しい種類の抽象機関を用意することで、「実質的に」立ち上げ
                    られた現実という意味だ。
                    通常の現実においては、複数の抽象機関が同じ情報を抽象し、その内容の
                    同一性によってコンセンサスが生まれるが、新種の抽象機関においては、
                    相手の抽象が既に行われた状態でこちらが抽象を行うことになる。
                    これによって、こちらでの抽象の仕方について、予めある範囲が想定
                    されることになるが、これがおそらく、外部に圧縮過程が挿入された
                    感じを生むのだろう。
久々にひどく言葉足らずな内容になってしまった。
                    取り敢えずの覚書として残しておこう。