血か、死か、無か?
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森博嗣「血か、死か、無か?」を読んだ。
細胞や国民が日々入れ替わっても、個人や国家は
同じものとして認識され続ける。
あるレイヤの個の同一性にとっては、それよりも
低レイヤの個の同一性は問題にならないという
特徴が、意識による抽象にはあるのだろう。
クローン、頭部を移植した存在、冷凍保存から蘇生
した存在、直接会ったことのない存在、トランスファ
のように物理的身体をもたない存在。
これらの同一性をもたらす基準はなんだろうか。
それはつまり、こういった存在は、如何にして存在
しなくなったことになるのかという問いと同じだろう。
ジュラ・スホ、マイカ・ジュク、サエバ・ミチル、
マガタ・シキ。
表面上の姿は変えつつも、100年単位で存続している
存在を同一視することと、毎日顔を合わせている知り
合いや自分自身を同一視することの間には、何か違う
ところがあるだろうか。
寿命がのびて、入力される情報が増えれば増えるほど、
同一視の基準となる割り算の除数を大きくしなければ
いけないのかもしれない。
いつでも除数を自在に設定し、駱駝にすらなれるのが、
天才の天才たる所以だろう。