演劇とは何か


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鈴木忠志「演劇とは何か」を読んだ。

人間には、フィクションとしての共同性をもたなければ 生きていけない部分と孤人的な部分があり、その関係を 見すえた上で個人になるために表現行為や創造活動を しているのが集団作業としての演劇なのです。
鈴木忠志「演劇とは何か」p.111

集団において共有されてきたものは、言語、習慣、常識、 「型」、「形」などの判断基準として析出する。
それが固定化して集団が壊死することを防ぐには何らかの エラーを導入する必要があるが、歴史性を免れたエラーの 導入は集団を瓦解させる。
笑い遊びが固定化と発散の間でバランスを取ろうとする 衝動であるのと同じように、演劇を含む芸術全般もまた、 これまでの関係を踏まえた上で新しい関係を築く行為である ことによって、更新される秩序としての集団を駆動する。

観客が「信仰を等しくせざる者」として異質な判断基準を もたらしながら、共有されてきた判断基準が同質なものに 収斂しないように、俳優が「舞台的身体感覚を遊ぶ」。
それぞれの身体がコミュニケーションする場所からも情報を 受け取りながら関係を更新するプロセスである演劇もまた、 生命的なるものである。

演劇とは観客と俳優との間で起こるもの、というより 観客と俳優とが同時に共存する場で起こるもの=作品だと。
同p.55