数学的と物理的
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「数学的に同じ」というのは、ある現象同士が
同じ構造をもっているということであり、
要は同じ見方ができるということだ。
同じかたちの微分方程式でいろいろな物理現象を
表現できるケースのように、物理的に異なるけど
数学的に同じということはよくあって、人間の
抽象能力の高さの現れになっている。
逆に、数学的に異なるけど物理的には同じという
ことはあるんだろうか。
行列力学と波動力学のように、表現は違っても
数学的には同等なものを異なると言わないのだと
すると、これは案外難しいように思う。
数学的に見るというのは、ある現象の特定の構造に
注目し、それ以外の部分を捨象することであるから、
一つの現象に対していろいろな見方ができるという
意味では、そういうケースはいくらでもあると言える。
でも、光の粒子性と波動性という二つの見方が
量子力学として統一されたように、人間には
抽象せずにはいられない性があるように思われる。
「その……、思考の複雑性が、数学を生んだのです」
「単純な思考装置は、物事を単純に考えようとは思わない、 ということですね」 森博嗣「私たちは生きているのか?」p.194
理論物理の世界にいると、不確定性さえも法則になる。
(中略)思うようにならないことは、まだ人知が 及んでいないと信認する。理論を妄信したい。
なにもかも確信したい 森博嗣「デボラ、眠っているのか?」p.236