近距離信仰
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直接性の神話と同じくらい強く信奉されているのは、
                    近くにいる人間は同じような価値観をもっていると
                    いうことだ。
                    前者に比べると後者はやや薄れつつあるが、それでも
                    漠然とした海外への憧れのようなかたちで根強く
                    残っているし、実際にある程度の妥当性がまだまだ
                    あるように思う。
両者はいずれも、近距離への信仰だと言える。
                    距離が近づくことで通信量が増え、コンセンサスが
                    取りやすくなるのは間違いないと思われるので、
                    かつてはかなり的を射た信仰だっただろう。
通信の範囲が拡がり、速度が速くなるのに合わせて、
                    それらが信仰でしかないということを、もう少し
                    気に留めるのがよいように思う。
                    通信形態が集合の在り方を決めるように思われるのに、
                    通信の変化が集合の変化に直結しないのは、この手の
                    信仰が大きな慣性になるからなのかもしれない。
2016-12-16追記
                    神林長平が「ぼくらは都市を愛していた」で〈田舎〉と
                    呼んだものは、この近距離信仰をベースにしている。
                    逆に、近距離信仰を保ち続けることで、多くの心理的身体は
                    未だに〈田舎〉に縛られたままだと言える。
                    〈都市〉という装置が機構としては実装され、「都市」
                    と呼ばれる地域も誕生したというのに。