熊本地震被害調査速報会
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土曜日に建築学会主催の熊本地震の速報会に参加してきた。
ニュースでは五十田先生のコメントが取り上げられているものが
多いが、ややずれたかたちで伝えようとしているあたり、まあ
こんなもんか、という感じである。
現行の設計体系では、二次設計において気象庁の震度で言うと
6強〜7程度の地震に対して倒壊しないことが求められる。
設計ルートによって計算の仕方は様々だが、どれも検討対象とする
地震動が一回分というのは同じだ。
今回の熊本地震のように、数日おきにレベル2の地震が立て続けに
起こるということは想定していない。
こういうことをもって、現行の設計体系の不備を指摘するのは
的外れだと思うが、やはり建築の構造設計の考え方が一般に
知られていないんだなというのは痛感する。
技術的な話にはエンジニアリング的な考え方が多分に含まれる。
リスクはゼロにはならないし、リスクを減らそうと思うとコストが
飛躍的に上がっていく。
そういった話を感情を爆発させずに冷静に対話することが必要である。
医者の世界はどうやってその辺りをこなしているんだろうか。
あちらはあちらで問題があるのかもしれないが、少なくとも建築に
比べると、ある治療方法にかかるリスクやコストを伝えた上で、
必要に応じてセカンドオピニオンも交えながら、患者が納得した状態で
医療行為に臨んでいるようなイメージがある。
建築の設計もそういった部分をもっと重視していく必要があるのではないか。
建築基準法では震度7クラスでは倒壊しないことが求められるが、
地震後に部分的な補修だけで使い続けたり、資産価値が残るような
状態に留めたりすることまでは求めていない。
そこまで求めようと思うと、構造体にかかるコストは増大していくから、
仕上げ等の構造体以外のグレードを落とすなり、建設費を増やすなり
する必要がある。
構造設計の考え方や、施主としてどういったレベルの構造体を求めるのか
といった話ができていれば、地震後に自宅に戻るのが安全なのかどうか
という判断はずっと容易になるだろう。
といった感じで、もう少し建築士と施主が対話をしましょうというのが
五十田先生の話の中で一番よかった所だと思ったが、それよりも
現行基準の甘さを指摘したり基準を厳しくすべきだという方が目立つような
伝え方が見られるのは残念だ。
こういう対話をするようになることで、建築士の立場も少しはよくなっていく
ような気もする。そもそも世の中の建築士で構造が専門でない人達は
ちゃんと一次設計と二次設計の思想がわかっているんだろうか。
まずはそこからか。
まあ、医者と違って一生に一回世話になるかどうかという職業だから、
建築士側も施主側も何となく専門的なことは曖昧なままに任せておくという
状態が続いてしまっているが、もう少しなんとかしないとね。