ビットコインの身代金
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病院がクラッキングされて身代金を払うというニュース。
gigazineの記事
記事中のコメントは
ランサムウェアの相談件数の増加を受けて、IPAは 「ランサムウェア感染被害に備えて定期的なバックアップをすべき」
と注意を呼びかけています。
で締めくくられている。
現代社会で、病院に銃を持った人間が立てこもり、身代金を要求するような
事件が起きたら警察が動いてくれるだろう。
事態の推移は事件ごとに異なるだろうが、身代金を支払うことなく
犯人を拘束することも一定の確率で可能である。
しかし、未来の(というか既に現代の、になりつつあるが)犯罪は
犯人はその場にいないということがまま起こりうる。
身代金もビットコインで支払われたそうなので、昔のドラマでよくあったような、
身代金引き渡しのタイミングで確保みたいな伝統芸もできない。
これは戦争も同じだ(その辺りを伊藤計劃トリビュートで藤井太洋が描いていた)。
こういう事件に対して、警察は対処できるようになっていくのだろうか。
それとも、IPAが勧告するように、ユーザサイドでの自衛がメインに
なっていくのだろうか。
ユーザ自身、あるいは民間の警備会社のようなものでないと難しいだろう。
最近ではApple社が国家権力の介入に対して、バックドア作成の要請には
応じないというコメントを出したように、個人情報を無条件に国家に
引き渡すということに対して急速に敏感になっている。
守秘義務を結んだ民間の会社に守らせるというのは、アンチウイルスソフトを
入れるのとは少し違った意味だ(それはユーザの自衛に近い)。
あるいは、アンチウイルスソフトに人工知能が実装され、侵入してきた
ウイルスと一進一退の攻防をするようになったら、委託に近くなるのかもしれない。
とにかく、サイバー空間でのできごとに対する国の支配は
薄まっていく方向にあるのは間違いない。
というよりも、ここで言う国は国民国家のことであり、サイバー空間で
これと同じ役割を果たすのはGoogleやらAppleやらMicrosoftやら
Amazonやらだろう。
現実の世界でも、人間は最初は小さな集落を形成していた。
これはインターネットが普及する前のパソコン通信に近いだろう。
その後、現実世界での国家の誕生と符合するように、
インターネットが普及することで強者と弱者という序列もできている。
情報を与える側が強者、受け取る側が弱者である。
国民国家はサイバー空間が広がり、それが現実の世界に干渉するように
なってから現れた後発のユーザの一人に過ぎない。
それが支配者側に回るような事態に陥るのを、現時点での支配者達が許すだろうか。
弱点があるとすれば、サイバー空間の住人はそれでもやはり現実の空間を
必要としていることだ。ネットワーク用のケーブルを引かなくてはいけないし、
サーバやクライアントを置いておくためのスペースも必要だ。
そして何より、人間の身体を生かしておくための環境を維持するのに
まだまだ膨大なエネルギーが要る。
おそらく、国家側がどんどん小さな政府になっていくことで、
権力は維持しつつ折り合いをつけていくのだろう。
消費者庁が徳島に移転するとか、ベーシックインカムを導入するとか、
地方創生の先にはそういった未来が待っているように思われる。
こういうニュースに対して、ハッカーはひどいやつだ、とか、ハッカーじゃなくて
クラッカーと言うのが正しい、とか言っている場合ではない。