そして父になる


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時期尚早な梅雨空の朝は、一筋の涙とともに始まる。

土日に寝過ぎたためか、朝5時に目が覚める。
二度寝するのももったいない気分だったので、 久々に自宅で朝ご飯を食べるために 近所のスーパーまで朝の散歩に出かける。
出がけには台所の上に溜まっていたペットボトルを ゴミに出す。

お湯を沸かしながら食パンを2枚トースターへ。
片面4分片面1分でじっくり焼いたのが好きだ。
1枚目には少し前におみやげで貰ったいちごジャム、 2枚目にはいつもどおりの納豆である。

部屋の明かりを消して、日曜日に買いだめたDVDから 「そして父になる」を選ぶ。
まだ6時前なので8時頃には見終わるだろう。
コーヒーやパンを取りに行く度に始めのセリフを聞き逃しては 最初から再生を繰り返すこと2回。
やっと落ち着いてトーストをかじりながら鑑賞を始める。

個人的に最も好きだったのは是枝監督の絵の残し方だった。
面接後の階段が一番印象的だったが、目を残したまま 思考だけ先に進めるというのが「思いを馳せる」という 行為にとても効果的だったように思う。

シーンとしてはやはりクライマックスが圧倒的に心に響くものがあっただろう。
琉晴が野々宮家に溶け込んでごっこ遊びに付き合ったり、 その中でお父さんと呼んでいたり、家の中でキャンプをしたり。
夜には尾野真千子がベランダで泣き、朝には福山雅治がリビングでむせぶ。
カメラはいらないと言った慶多の思いを知った父親とともに、 思いがけず涙を流す。映画でこんな泣き方をしたのはいつぶりだろう。

息子を取り違えられた二組の親子の育ての親と息子、 再婚した二組の親子の義理の母と息子。
看護師の息子の肩を叩いた瞬間から、取り残されていた良多が 取り戻していくもの。
父になるための必要十分条件は父であること。
To be a father means to be a father.

英語の題はLike father, Like Son (この父にしてこの子あり)のようだが、 福山さん演じる良多とリリーさん演じる雄大が、慶多と琉晴に対してそれぞれ 父であるために6年間してきたこと、これから父になるためにすること、 そして父であるとはどういうことなのかという思いを込めて、 To be A Father を推したい。