勝沼


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外は早も夏日だというのに、 大日影トンネルの中は肌寒い。
全長1.4kmのトンネルの中程は 蛍光灯のあかりのみに照らされ、 気温は10℃あまりしかない。

前日の晩に思い立ってから約12時間。
新宿から電車で2時間あまり、1500円くらいの位置にある 勝沼ぶどう郷駅に来ていた。

ゴールデンウィーク後半の初日だったが それほど人混みに溢れかえっている様子はなく、 同じ電車で降り立ったのは数人程。

家を出る時間が少し遅くなったこともあり、既に日は高い。
やはり帽子を被ってくるべきだったかと後悔するが、 むしろ予定の場所を回りきれるかが心配だ。

線路沿いに東へ進むと程なく大日影トンネルの入り口が現れる。
入り口の手前から空気は冷たさを増していき、 100mも入ると別世界である。
線路やPC製の枕木の雰囲気がまだ新しさを残している中で、 レンガ積みのトンネルだけは近代遺産の風格を帯びていた。
出口に近づくに連れて外気が暖かさを取り戻すのが、 そこはかとない幸せを覚えさせてくれた。

トンネルを抜けたところにある、トンネルを利用したワインカーヴを 少し覗かせてもらい、甲州街道を下る。
ヨーロッパ式の栽培方法だとぶどう「畑」という感じがするが、 日本式の栽培方法の場合はぶどう棚という言葉が似合うなと思う。

勝沼堰堤は意外なほどに迫力があって、立ち寄ったかいがあった。
これほどの規模の土木工事を成し遂げたことに感心する。
このあたりでなぜか「夏は来ぬ」が口をついて出てきたのだが、 それほど暑かったのだろう。

それから大善寺、ワイン博物館、宮光園と次々と回る。
大善寺だけかと思いきや、街中でも本当によく藤が下がっているのを見かける。
勝沼の住宅の3割くらいは庭に藤棚があるんじゃなかろうか。
ワイン博物館の館長さんに色々と話を伺い、蒼龍、大泉、原茂あたりの ワイナリーに寄ることに決めた。

宮光園の向かいがメルシャンだったので一応メルシャンにも立ち寄る。
庭がきれいで、遠景に青空と山々を控えた芝生の感じは大変絵になっていた。
メルシャンのワインは去年のマリコヴィンヤードのときに色々飲んだので、 また今度ということで。

そこからワイナリーを2件はしごして計3本のワイン4kgを抱えながら いざぶどうの丘へ。(結局大泉は立ち寄らず) 既に17時を回っているので腹ごしらえをするためにまずはほうとう料理屋へ直行する。
鍋一つは結構な量だったが、野菜たっぷりでとても美味しかった。
そして天空の湯に浸かりながら日が暮れるのを眺め、 ワインをもう1本買い足して勝沼に別れを告げる。

前日に思い立ったわりには色々と見て回れたし、美味しいものも食べられ 温泉にも浸かれたので大変充実した一日になった。