ムットーニ
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世田谷文学館でムットーニコレクションを見た。
人形劇。音楽。照明。朗読の声。
すべてがコントロールされた円環的なメカニズムでありながら、人が見ることでオーガニズムになる。パンフレットに「見る人の数だけ物語がある」と謳われ、荒俣宏に「機械や星の冷たい夢でしか癒されない人たちのための暗い玩具箱」と評されたムットーニにおいては、メカニズムとオーガニズムが絶妙にバランスしているように思う。
レイ・ブラッドベリの「万華鏡」を題材にした、「アローン・ランデブー」という作品が好きだ。
宇宙飛行士が大気圏に突入して流れ星になる瞬間、地上では子どもが願いを込めている。重力場に為す術なく一つの秩序が解体されていく過程が、希望を与える別の秩序として認識されるというデュアルな情景を、人形劇と音楽と照明と声とが、奇跡的なバランスで想像させてくれる。
オーディオブックにはいまいち馴染めないと思っていたが、逐語訳的な情景描写ではなく、意訳的で簡潔な情景描写をする機構と組み合わせるのは、結構いいかもしれない。
p.s.
この作品に感動して涙が出たと話したらピュアだと言われたが、感動とは主体と客体の関係がピュアになることを言うのだと思う。主体というモデルと客体という対象が同期することで、両者がコヒーレントな状態に陥ることが「感じる」であり、感じることによって差異が消失する過程が「感動」である。そしておそらく、感動の大きさとは、消失する差異の大きさを意味するのだと思われる。主体や客体がシンプルであるよりもコンプレックスであるほうが、感動に至るのは難しいけれど、達成される感動は大きい。