異端の時代
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森本あんり「異端の時代」を読んだ。
正統と異端というものもまた生命的であり、
                    それらが対象として抽象されるためには、
                    固定化=形成と発散=批判のバランスが
                    取れた情報の流れが必要となる。
その流れは「信仰」と呼ぶべきものであり、
                    流れの中に秩序が見出されては正統、異端、
                    正典、教義、などと名付けられ、流れの変化
                    とともにそれらの秩序は更新されてきた。
流れが完全によどんでしまえば、正統は
                    自己隠蔽したまま絶対化されてしまい、
                    流れが完全に枯れてしまえば、正統も
                    異端もなくなる。
従来の宗教が陥ったのは、一つの固定化=
                    形成への収束による信仰の壊死であったが、
                    ポピュリズムがもたらすのは、発散=批判
                    への傾倒による信仰の瓦解であり、両者は
                    信仰の死という点では同じことである。
自由とは、秩序が更新される様のことを
                    言うのであり、秩序が解消されたまま形成
                    されないことを言うのではないことを思えば、
                    ポピュリズムは中世の宗教並みには非-自由
                    だと言えるだろう。
ポピュリズムを現代の宗教と言うことも
                    できるかもしれないが、瓦解の傾向をもつ
                    ポピュリズムは、もはや宗教の体をなして
                    いるとは言い難いように思われる。