夢の宇宙誌
[tag: book]
澁澤龍彦「夢の宇宙誌」を読んだ。
ひたすらに部分を志向し、分化を続ける、真面目で
古典主義的で労働的な固定化の流れの行く末には、
壊死しかない。
部分ではなく全体を志向するバロック的で遊び的な
逸脱によって、その収束過程から飛躍し、未分化を
経て別の分化へとメタモルフォシスする。
その夢想したもうひとつの分化形態、貝殻のような
ユートピアに、自動人形、天使、アンドロギュヌスが
戯れる、球体の完全性をみる。
既存の判断基準に絡め取られた末の壊死を避ける
衝動的な飛躍こそ、生殖本能ともセクシュアリティ
とも区別される、「こちら」の拡張としての愛欲の
本質なのだろう。