君の名は。


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「君の名は。」を観た。

面白かったし、絵もきれいだったのだけれど、 何というか、新海誠に期待し過ぎていたのかもしれない。
小学校のときに片想いしていた相手に、 同窓会で20年振りに会ったとき、相変わらず きれいなんだけど、自分の中で美化されていた イメージとのズレに勝手に幻滅してしまうような感じだ。

ヒカルの碁で言えば、佐為の影をみて進藤ヒカルを 追ってきた塔矢アキラが「ふざけるな」と言ったときの 気分に近いが、そこまで悪い映画ではないのは確かだ。
新海誠だと思って観なければよかったのかもしれないが、 新海誠でなければ観に行かなかったのも確かだ。

個人的な好みとして境界条件がより厳しく設定されている ものを好む傾向が強いのかもしれない。
「君の名は。」も震災を意識して製作したようだが、 同じく震災を中心に据えた「シン・ゴジラ」とは 方向性が違いすぎて比較が難しい。
「シン・ゴジラ」は庵野秀明の変態レベルのこだわりの強さで 意味付けに耐えるレベルのディテールに仕上げ、現実という 境界条件を可能な限り守っているように感じた。
一方で、「君の名は。」は作画こそ細かいものの、設定としては 何でもありに感じられてしまう。

芸術をつきつめようなんていう人間の大半は、おそらく jockであるよりもnerdであることの方が多く、 庵野秀明も新海誠も優れたnerdだと思っている。
それは、Wikipediaの当該ページでMITでの用法として 取り上げられている意味でのそれであり、 必須項目であると同時に最大の賛辞でもある。
受け手である自分もnerdの傾向が強いために、「シン・ゴジラ」は 製作者もnerd、活躍するのもnerd、nerdが好きな要素も 盛りだくさん、というのがはまったのだと思う。
「秒速5センチメートル」は新海誠のnerdらしさが全開で、 nerd界隈ではかなり高評価されている気がするが、 「君の名は。」はそのあたりがだいぶ薄められたために、 間口は広がったが、個人的にはうーんといったところなのだろう。
下記のツイートがこのあたりを上手く表現していると思う。

でも、音楽を入れるタイミングの良さはさすがという感じで、 あの自然さというか王道っぽい感じはとても好きである。
あと、何となく「インターステラ―」を思い出した。
こちらからは以上です。