第四の壁


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センサの定位情報とセンサへの入力情報の間での 意味付けというコンセンサスが「今、ここ、私」を生む。
仮に、3km南の視覚情報が、頭の回転とは逆方向に変化 しながら5分遅れで入力されたら、「今」は5分ずれ、 「ここ」は3kmずれ、方向の逆転も含めた全体として「私」が ずれることになるだろう。
それがどこでもドアの精神的実装につながる。

第四の壁は、この二つの情報のコンセンサスを断絶することで 「今、ここ、私」を消し去る。
そうして彷徨った情報処理過程が、第四の壁の向こう側の どこかに同期することで感情移入が達成される。

VRでは、そのコンセンサスを技術的に補い、第四の壁を迷彩 することで「今、ここ、私」を仮想している。
現状ではおそらくセンサへの入力情報を制御する方式しか ないが、定位情報の方を制御することでも第四の壁は 消せるはずである。
それは、東京大学制作展2016のLove Dream Happinessが 想定する、咀嚼会が成立するかという問題と同じだ。

本質的には、どちらの方式も第四の壁を仮想的に消している 点で同じなのだが、果たして後者はVRと呼ばれるだろうか。
そこに再構成されるものを「私」と呼ばないのであれば、 それはむしろAIの概念に近いと考えられる。