男女
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そして男は女に対する絶対的な勝利宣言に至った。
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                    長い歴史の中のあらゆる制度において、
                    男は常に女に先行しようと努めてきた。
                    過去に女が排斥された仕組みを挙げれば
                    枚挙にいとまがないだろう。
                    社会という制度、国家という制度…。
                    何を苦心して男は自らの立場を死守しようとしてきたのだろうか。
性的共食いにおいて、捕食される側は常に雄である。
                    遺伝子を残すという生物の至上命題において、
                    雌の絶対的優位は約束されているようなものだ。
                    生まれながらに、いや、生まれる前から背負っていた
                    その絶対的な劣等感を払拭するために、雄は自らの優位性を
                    作り上げようとして様々な仕組みを作ってきたのでは
                    ないだろうか。
時は資本主義経済のゆきづまった21世紀初頭。
                    この時代のわかりやすいステータスの一つが仕事である。
                    旧き昭和の「男尊女卑」を脱出し、女性にも社会進出を、という
                    セリフが声高に叫ばれる中、ゾッとするようなニュースが二つ
                    飛び込んでくる。
                    一つは女性登用の数値化目標の義務化、
                    もう一つは企業による卵子凍結の保険適用だ。
圧倒的不利な状況を何とかごまかすために
                    雄は苦心して砂上の楼閣とも言える数々のシステムを築き上げる。
                    その中に後から雌を取り込むことで、あたかも
                    雄の優位性が存在するかのような錯覚を作り出す。
                    最終段階として、そのシステムの中での繁栄の対価として、
                    本来雄が勝ち得なかったもの、雌の絶対的優位性を担保するものであるところの
                    生殖機能を奪い取る。
                    これが暗黙のうちに完遂されたとき、
                    男は女に対する絶対的な勝利宣言に至るだろう。
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そんなSF小説があってもよい。